工藤元(kudogen)公式 映画・ドラマ評論家

工藤元(kudogen)。1990年生まれの31歳。大阪府在住。 映画・ドラマが大好きで、年間200タイトル以上を視聴しています。工藤元(kudogen)公式では、私が実際に視聴した映画・ドラマを、あらすじ・ネタバレでご紹介。感想・解説・評価もあわせてご紹介します。

映画

工藤元(kudogen)の映画あらすじ・ネタバレ解説『リチャード・ジュエル』

投稿日:

※2021年9月9日更新

クリント・イーストウッドの監督最新作『リチャード・ジュエル』が2020年1月17日(金)に公開されました。初日に映画館で観てきましたが、実話をベースとした作品ということもあり、他人事でなく自分にも起こりうるリアルさが伝わってくる重厚なサスペンスに仕上がっています。

この記事では、映画『リチャード・ジュエル』の内容・あらすじ・結末をネタバレで解説しています。監督や出演俳優・キャスト、感想や評判も紹介します。

工藤元(kudogen)の映画あらすじ・ネタバレ解説『リチャード・ジュエル』の概要・感想や評判

※映画『リチャード・ジュエル』の予告

概要

映画『リチャード・ジュエル』は、アメリカで1996年に実際に起こったアトランタオリンピック爆破事件を題材とした映画です。この事件では2名が死亡、111名が負傷する大惨事となりました。

爆弾の第一発見者であった警備員リチャード・ジュエルさんは、初めは英雄として報道されていましたが、ある時からマスコミに容疑者として扱われて一気に拡散、全米から誹謗中傷を浴びることとなりました。本作の広告宣伝コピーは、「その日、全国民が敵になった-」です。英雄として羨望の的であった存在から、一夜にして犯罪者として憎まれる存在になった事件をよく表していますね。

本作は英雄から一転し爆弾犯とされたリチャード・ジュエルさんと、彼に依頼され無実を晴らす弁護士ワトソン・ブライアントの苦悩と闘いを描いています。監督のクリント・イーストウッドは、出演しているアカデミー女優キャシー・ベイツから「なぜこの映画を作りたいと思ったのか?」と問われて、「自分が観たい映画だからだ」と答えたそうです。また別のインタビューでは、「リチャードが“普通の男”だったから映画を作りたかった」と言っています。

いつでも誰にでも起きうる事件だからこそ、現代に生きる私たちに警鐘を与えてくれているのかもしれません。

リチャード・ジュエル役はポール・ウォーター・ハウザーが演じています。また、弁護士ワトソン・ブライアント役にサム・ロックウェル、リチャードの母ボビ・ジュエル役にキャシー・ベイツと、2人のアカデミー俳優が出演しています。

※公式サイトはこちらです。

映画『リチャード・ジュエル』公式サイト

感想

私の感想としては、「題材は悪くないと思うのですが、脚本がなぁ・・・」という感じです。おおまかなストーリーは、爆弾を発見した英雄から一転、FBIとメディアによって爆弾犯にさせられてしまった主人公が、古い友人とともに権力と戦い勝利を掴むというものです。

テーマは現代にも十分通じるというか、むしろ現代だからこそ共感できる題材なのです。クリント・イーストウッドが語る、現代社会への警鐘「いつでも“悲劇”は起こりうる」でもイーストウッド自身が語っているように、本作ではメディアと権力の暴走が描かれていますが、SNSなどネットで一瞬にして情報が拡散してしまう現代では特に、こうした事態が起こりやすくなっていると思います。

最近では、常磐道でのあおり運転で全く無関係の人が容疑者というデマが拡散し、加担した政治家が辞任したり損害賠償請求されたりするような事件(常磐道あおり運転でデマ被害=女性「無関係なのに実名」-虚偽情報拡散、賠償請求へ)も起こっています。

現代だからこそ、リチャードの状況にはとても共感・同情し感情移入できますし、敵となるメディアやFBIのやり方はかなり非道に描かれているので、怒りや反発心を抱かせることには成功していると思います。そのため、ストーリー的には強くカタルシスを感じるはずが、映画を見終わったあとにあまり爽快感が無いんですよね。

なぜかと考えたのですが、これは1つはリチャードの描き方にかなり問題があると思います。リチャードは、知性に問題があると思ってしまうぐらい愚鈍に描かれていて、正直かなり怪しい存在です。また、FBIとのやり取りも自分から罠にハマっていくというか、とにかく間抜けなんですよね。最善を尽くしているようには見えず、権力の理不尽さや恐ろしさが伝わってきません。

もう1つ、リチャードと弁護士のワトソンが過去にそこまで友情を育んだと思えないし、そう描かれてもいないんですね。だから共闘する姿にあまり共感できませんし、なぜワトソンがこんな怪しいリチャードを信じるのかが理解できないのです。

また、女性記者が情報を得るためにFBI捜査官と寝るシーンもあるのですが、これは事実ではない、もしくは事実かどうか分からない事です。事実を元にしているとはいえノンフィクションではないため、多少の演出は止むを得ないとしても、明確な事実でなければこの表現はかなり問題があると思います。

実際、女性記者が所属していたアトランタ・ジャーナルは非難しています(イーストウッド最新作が大炎上 亡くなった女性記者に偽りのイメージを与える映画の罪)。記者のキャシー・スクラッグスはもう亡くなっているため反論もできず、さらにアンフェアな感じがします。

イーストウッド自身は、クリント・イーストウッドが貫くレガシー 「リチャード・ジュエル」に込めた思いの中で、いくつかの事実を元に「ありうる話と考えた」などと言っていますが、こうした偏見や誤解によって苦しんだ人を描く作品において、その作品がまた誰かを偏見や誤解で傷つける可能性がある事を無視しするのは、非常にアンフェアだと思いました。

評判

映画『リチャード・ジュエル』の評判ですが、以下のようになっています(2020年1月17日現在)。

映画.com Filmarks映画 Yahoo!映画 シネマトゥデイ
4.3 4.0 4.09 4.3

全体的には評価が高いですね。かなり評判が良かった映画になりました。

ポジティブな意見としては、主人公リチャード・ジュエルと弁護士のブライアントとの友情、母親との家族愛、権力と闘う姿勢に感動したといった感想が多かったです。キャストについてはやはりキャシー・ベイツの評価が特に高く、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされた事も納得ですね(受賞は逃しました)。また、記者役のオリビア・ワイルドの妖艶な演技も評価が高かったです。

ほか、ネガティブな意見としては、ストーリーというよりもイーストウッドの映画作品に対するスタンスや、事実をテーマとした映画化の難しさなどに触れたものが多く見受けられました。

工藤元(kudogen)の映画あらすじ・ネタバレ解説『リチャード・ジュエル』の内容・あらすじ・結末(ネタバレ)

映画『リチャード・ジュエル』の内容・あらすじ・結末をネタバレで解説します。

リチャードとワトソンの出会い

リチャード・ジュエルは法律事務所の備品担当として働いていて、パートナー弁護士のワトソン・ブライアントと知り合います。リチャードは仲間から「デブ」と呼ばれてからかわれますが、ワトソンはひとりの人間としてリチャードを扱い、2人の間に友情が芽生えます。

リチャードは法律執行者(警察官や保安官など)に憧れ、毎日勉強をしていました。警備員として働くため法律事務所を辞めます。リチャードは最後の挨拶にワトソンが好きなスニッカーズを渡すと、ブライアントは「quid pro quo(ラテン語で「交換条件」)」と言い、「君は警官になる夢をかなえるが、決してクズにはなるな」と100ドルを餞別として渡します。

爆弾の発見

10年後、リチャードは大学の警備員として働いていました。リチャードは夢をかなえ保安官事務所の副保安官になっていたのですが、あまりにも生真面目で融通がきかず法やルールを厳格に守ろうとしたため、職を追われていたのです。大学も苦情や違反が多くクビになります。

次の職場はアトランタオリンピックの音楽施設の警備員でした。ここでもリチャードは生真面目さを発揮し、怪しいリュックサックを背負った観客を追っていったらビールが入っているなどの勇み足もあります。

しかしそうした生真面目さが幸いし、ベンチの下に怪しいリュックサックを発見するのでした。警察官は気軽に考え信じませんが、リチャードはマニュアル通り調べようと説得します。

爆発とヒーロー

警察にも911に爆破を予告する電話が入ります。リュックサックを爆発物処理班が確かめると、たしかにパイプ爆弾が入っています。警官も見逃しかけた爆弾が入ったリュックを、リチャードの生真面目さが発見したのです!

リチャードは警察と協力し、ベンチから観衆を遠ざけます。しかし結局間に合わず、2人が死亡し100人以上が負傷する大惨事となりました。

一夜明けるとリチャードは、爆弾を発見し被害を最小限にとどめたヒーローになっていました。有名キャスターがインタビューし、書籍出版の話まで舞い込みます。リチャードは家に帰ると母親のボビと喜びを分かち合い、出版契約の依頼をブライアントに電話します。ブライアントは独立していて仕事がなく、助手のナディアと暇を持て余していたため、依頼を快諾します。

ヒーローから容疑者に

一方で、FBIは第一発見者のリチャードが怪しいと考え始めていました。不満を持つ白人男性というのがプロファイリングとしては犯人像にぴったりで、その頃、注目を引くために爆発や火事を自分で起こす警察官や消防士が多くいたのです。また、首になった大学から通報が入り、過去に逮捕歴などがあることもわかりました。FBIはリチャードを第一の容疑者と考えます。

アトランタ・ジャーナルの新聞記者であるキャシーは、とくダネを掴むためFBIのショウ捜査官に色仕掛けで迫り、リチャードが捜査中であることを知ります。そして「FBIがリチャードを捜査している」とスクープを一面で発表します。

その時リチャードは、ショウ捜査官達にFBIに任意で連行されていました。ショウ捜査官達は、訓練であると嘘をつき、リチャードに不利な証拠を捏造しサインさせようとします。法律執行者への憧れからFBIに協力していたリチャードですが、サインだけは拒みワトソンに電話をかけます。副保安官をしていたリチャードは、書類にサインすると取り返しがつかないことをわかっていたのです。ワトソンは留守電を聞き、すぐにFBIに電話をかけてリチャードは釈放されます。

メディアの報道とFBIの捜査

リチャードが家に帰ると、大量のメディアが待ち構えていました。何十人ものレポーターが家を取り囲み、TVではリチャードを犯人扱いする報道ばかりです。ワトソンがリチャードの家までやってきて、無実を証明するため戦っていくことになります。

連日リチャードを犯人扱いする報道がなされ、リチャードもボビも精神的に追い込まれます。さらに過去に逮捕歴があったり、狩りをするため大量の銃器を所持していたりと、ますます不利な状況になります。

FBIの家宅捜査が入り、ありとあらゆるものを押収されてしまい、盗聴器までしかけられますが、なぜかリチャードは一見協力的です。それはリチャードが自分の憧れの法律執行者をリスペクトしていたからです。

ワトソンは怒って「なぜ怒らないんだ!」と言います。リチャードは怒って反論し、「僕だって怒っている!みな僕を仲間なんて思ってない。デブだと思っているんだ!」。ワトソンが「なぜ自分に弁護を頼んだ?」とリチャードに聞くと、リチャードは答えます。「あなただけが自分を人間として扱ってくれたから」。リチャードとワトソンは、メディアとFBIに反撃することを誓います。

リチャード達の反撃

リチャードとワトソンは新聞社に乗り込み、キャシー達に抗議します。キャシーは反論しますが、リチャードが本当に犯人なのかが疑問に感じました。そこで、キャシーは会場に足を運び、公衆電話までの徒歩時間を確かめます。リチャードには電話をかける時間がないことを知り、無実であることを確信するのでした。キャシーはショウ捜査官に事実を伝えますが、まったく相手にされません。

メディアが集まる前でボビがスピーチします。ボビは「自分の息子は無実です。大統領、助けてください」と涙ぐみながら演説します。思わずキャシーや他メディアも、もらい泣きする名演説でした。

FBIの尋問とラスト

FBIの尋問が始まります。いくつかの質問のあと、リチャードは逆に捜査官に尋ねます。「自分が犯人だという証拠はあるのか?」捜査官は沈黙します。「ならもう帰っていいね」とリチャードとワトソンはFBIを後にします。

リチャードとワトソンはレストランで食事をしています。ショウ捜査官が近づき1枚の手紙をワトソンに渡します。そこには容疑者からリチャードを外すと書かれていました。2人は勝利したのです。リチャードは泣きながらドーナツを頬張り、ワトソンと握手して感謝を伝えます。

6年後、リチャードは警察官になっています。ワトソンが尋ねてきて真犯人が捕まった事を告げ、映画は幕を閉じます。

エンドロールで、リチャードが44歳で亡くなったこと、ワトソンとナディアが結婚し子供を2人もうけたこと、ボビが子供のベビーシッターをしていることが流れます。

工藤元(kudogen)の映画あらすじ・ネタバレ解説『リチャード・ジュエル』の製作・監督・出演俳優(キャスト)

映画『リチャード・ジュエル』の製作・監督・出演俳優(キャスト)を紹介します。

製作・監督

  • クリント・イーストウッド

製作(プロデュース)と監督(ディレクション)はともにクリント・イーストウッドが務めています。俳優としてはもちろん、製作や監督としても『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』『グラン・トリノ』『アメリカン・スナイパー』など、アカデミー賞を始めとして高い評価を得ています。

イーストウッドが製作や監督をし始めたころ、私は冷ややかな目で見ていたのですが、作家性が強いというかメッセージ色が明確というか、素晴らしい作品を多く世に送り出していると今は思っています。

他にも、『ミスティック・リバー』、『硫黄島からの手紙』&『父親たちの星条旗』、『インビクタス/負けざる者たち』、『ヒア アフター』などでも製作や監督を務めています。『ヒア アフター』はあまり日本ではメジャーではない作品ですが、マット・デイモン主演の名作だと思います。未見の方はぜひ。

また、最近ではブラッドリー・クーパーとは、前述の『アメリカン・スナイパー』や『運び屋』などで師弟関係のようになっていますね。ブラッドリー・クーパーが主演と監督を務めた『アリー/ スター誕生』では、レディ・ガガを主演に登用するのにクリント・イーストウッドの意見を求めたと言われています(もともと、監督クリント・イーストウッド・主演ビヨンセで企画が進んでいた)。

出演俳優(キャスト)

  • リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)
  • ワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)
  • ボビ・ジュエル(キャシー・ベイツ)
  • トム・ショウ(ジョン・ハム)
  • キャシー・スクラッグス(オリビア・ワイルド)

このあたりが主要キャストです。

主演のポール・ウォルター・ハウザーは知らない俳優でしたが、Netflixなどでいくつかドラマに出演しているようです。サム・ロックウェルは『スリー・ビルボード』でレイシストの警官を演じてアカデミー助演男優賞、キャシー・ベイツは『ミザリー』でアカデミー主演女優賞と、2人のオスカー俳優が出演しています。

みどころとしては、主人公リチャード・ジュエル役のポール・ウォルター・ハウザーと、弁護士ワトソン・ブライアント役のサム・ロックウェルが表現する、マスコミのせいで周りが全部敵になっても、友情と信頼に裏打ちされた不屈の精神で立ち向かっていく演技ですね。

ただ個人的にはキャシー・ベイツが一番でした。もともと大好きな俳優ということもありますが(個人的には『ミザリー』より『黙秘』の演技を評価)やはり演技力が抜群です。特に無実の罪で容疑者にされた息子をかばい、メディアの前で涙ぐみながらの演説のシーンは鳥肌モノでした。

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